メイド・イン・ジャパンは終わるのか
「奇跡」と「終焉」の先にあるもの
メイド・イン・ジャパン
は終わるのか
著者:武石 彰/青島 矢一
/マイケル・A・クスマノ
出版社:東洋経済新報社
出版日:2010/7/30
Amazon内容紹介
『メイド・イン・ジャパンは終わるのか』
「奇跡」と「終焉」のさきにあるもの
かつて1980年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「日本の奇跡」ともてはやされた日本が、
その後、1990年代以降、一転して「日本の終焉」と揶揄・同情されるまでになってしまった。
はたして日本は本当に強かったのか、その後本当に弱くなってしまったのか。あるいはもともと強かったのは神話に過ぎなかったのか、弱くなったというのは偏見に過ぎないのか。
ジェットコースターのように評価が上下動する日本の競争力、とりわけ「メイド・イン・ジャパン」の看板を背負って「日本の奇跡」をリードしてきた自動車とエレクトロニクスの二大産業にフォーカスを当てながら検証。
情報通信・自動車産業研究の権威であるMITのマイケル・クスマノ教授とともに分析しつつ、日本の進むべき選択肢を示す。
目次
| はじめに |
第Ⅰ部 | 日本の競争力を再考する |
第1章 | 「奇跡」と「終焉」の先に何があるのか |
| ~欧米の論調にみる日本の競争力評価 |
1 | 未知の国ニッポン |
2 | 欧米の論者は日本をどのように評価してきたか |
3 | 日本のビジネスシステムが羨望の的から批判対象へ転落した理由 |
(1) | 雇用制度と報酬制度 |
(2) | 企業戦略 |
(3) | ガバナンス制度 |
(4) | 縦系列構造 |
(5) | 企業と政府の関係 |
(6) | それらは成功要因なのか失敗要因なのか |
4 | 1980年代のビジネスシステムの分析を振り返って |
(1) | 事例選択における製造業への傾倒 |
(2) | 日本の事例を理想化して伝えた欧米研究者たちの思惑 |
(3) | 日本経済の成功がビジネスシステムを正当化し権威づけた |
(4) | 国際的な変革要因が強調され国内要因は見過ごされた |
5 | 1990年代、骨抜きにされていった日本モデルの仮説 |
(1) | アジア金融危機が日本の評価にもたらした2つの影響 |
(2) | 米国流株主・金融資本主義への流れは必然か |
(3) | 新しい資本主義の台頭が日本の評価を凋落させたのか |
6 | 今日、再度変化する論調 |
(1) | 日本ビジネスシステムへの新しい解釈が意味するもの |
(2) | 「日本の奇跡」と「日本の終焉」、その次は? |
第Ⅱ部 | 日本を牽引する産業に何が起きたのか |
第2章 | 日本の二大主力産業のこれまで |
| ~エレクトロニクス、自動車の位置づけと成果 |
1 | 競争力の本質を解き明かすために |
2 | 二大主力産業への焦点 |
3 | 1980年代以降の主力産業の足どり |
(1) | 生産・輸出の推移 |
(2) | 企業収益の長期変動 |
(3) | 研究開発投資と成果 |
(4) | 苦闘するエレクトロニクスと堅調な自動車 |
第3章 | 性能幻想がもたらす技術進歩の光と影 |
| ~デジタルカメラ産業 |
1 | 日本企業の強さはどこまで続くか |
2 | 世界のデジタルカメラ市場における競争状況 |
3 | 日本企業の競争優位の源泉 |
(1) | 広範囲な技術蓄積 |
(2) | 新性能を矢継ぎ早に投入する市場掌握術 |
(3) | 低価格化への対応―プラットフォーム化と海外生産 |
(4) | 半導体企業のターゲットにされずにきた幸運 |
4 | 設計と標準化と水平分業への流れ |
(1) | 初期の標準化の失敗 |
(2) | 標準ソリューションが普及しはじめる |
(3) | 底流で進むモジュール化そしてコモディティ化 |
5 | 潜在的脅威としてのデジタル技術による支配 |
(1) | 1個のシリコンチップが分業構造を崩していく |
(2) | 付加価値はつぎつぎと上流へ移行 |
6 | 日本企業の競争力を左右する六つの要因 |
(1) | 市場成長率 |
(2) | 低価格セグメントの拡大 |
(3) | 画素数競争の終焉と技術の飽和 |
(4) | レンズ技術の流出 |
(5) | CMOSセンサー(CIS)の脅威 |
(6) | システム範囲の拡大 |
7 | 完成品メーカーは脱統合化への対応を避けることはできない |
第4章 | グローバル・プラットフォームへの転換と日本メーカーの蹉跌 |
| ~携帯電話産業 |
1 | グローバル市場で突如失速した日本メーカー |
2 | 日本特有の固定概念が製品ライン戦略を誤らせた |
3 | アナログ市場(1981年から94年) |
(1) | 米国市場を席巻したモトローラの戦略 |
(2) | グローバル・プラットフォーム開発にいちはやく乗り出したノキア |
4 | デジタルGSM市場(1994年から98年) |
(1) | 段階的価格設定で参入障壁を築く欧米メーカー |
(2) | 国内市場でのカイゼン競争に明け暮れる日本メーカー |
5 | 複数デジタル規格の並存(1996年から99年)でさらに複雑化するグローバル市場 |
6 | 日本メーカー復活への課題 |
第5章 | 増大する複雑性と苦闘するサイエンス型産業 |
| ~半導体産業 |
1 | 1990年代以降、凋落の著しい「サイエンス型産業」 |
2 | 急速に複雑性を深化させた半導体産業の構図 |
3 | 日の丸半導体の競争力低下状況とその要因 |
4 | 米国半導体メーカー復活の切り札「TI流MES」の登場 |
(1) | 複雑性対処策としてのオープン・オブジェクト指向型MES |
(2) | 日本企業はなぜ新MESの意義と威力を理解しようとしなかったか |
5 | 最新鋭工場への投資遅れが生産システムの弱化を招いたのか |
6 | 視界不良に陥った日本半導体メーカー |
(1) | 標準全部原価計算方式の弊害 |
(2) | 視界不良を発生させた構造的な要因 |
(3) | 高度な自動化がもたらした技能と技術の補完性のほころび |
7 | 摺り合わせ能力を高める新たな試み―広島エルピーダの事例から |
8 | 日本の半導体生産システム復活のために必要なこと |
第6章 | 進化する「摺り合わせ能力」と戦略提携が導いた復活 |
| ~自動車産業 |
1 | 構造調整期から第二の拡充期へ |
2 | 1990年代初頭にピークを迎えた日本の自動車産業 |
(1) | 国内の停滞を海外の成長で補う |
(2) | 日本の競争優位に貢献したリーン生産方式 |
3 | 1990年代になぜ日本の自動車産業は失速したのか |
(1) | 日本メーカーに学んだ欧米メーカーの追い上げ |
(2) | 成長の終焉による問題の顕在化 |
(3) | 不得手な戦略的経営 |
4 | 競争力再建の二つの柱 |
(1) | 欧米メーカーとの戦略提携 |
(2) | オペレーション能力の進化 |
5 | 自動車産業の特質 |
(1) | 自動車という「製品」の特質 |
(2) | 自動車という「ビジネス」の特質 |
(3) | 「摺り合わせ能力」で威力を発揮する日本メーカー |
6 | 日本の自動車産業に死角はあるか |
第7章 | ハード主導の産業創出と新たな事業モデルの誕生 |
| ~家庭用ゲーム産業「終わりからの始まり」 |
1 | ファミリーコンピューターの登場と市場成長 |
2 | 日本の家庭用ゲーム産業の競争力の源泉 |
(1) | 任天堂の事業モデルとソニー・コンピュータエンタテインメントの戦略 |
(2) | ハードウェアとソフトウェアが統合されたシステム |
3 | ハードウェア企業主導の競争展開 |
4 | 成功体験とソフトウェアのシリーズ化がイノベーションの停滞をもたらした |
5 | 新たな脅威と日本企業の対応能力 |
(1) | オンラインゲームがもたらす影響 |
(2) | マイクロソフトの動向 |
(3) | ハードウェア企業のイノベーションへの対応能力 |
(4) | 日本のハードウェア企業の対応 |
(5) | ハードウェアにもとづいたソフトウェア競争力構築 |
第Ⅲ部 | 底流する構造変化にいかに対応するか |
第8章 | 技術進歩が生み出した新たな産業システムの脅威 |
| ~「製品プル型」か「デバイスプッシュ型」か |
1 | 1990年代日本企業への評価を再考する |
2 | エレクトロニクス産業が直面する変化の本質 |
(1) | 「製品」から「デバイス(機能モジュール)」へ、競争基軸の転換を迫る環境要因 |
(2) | 完成品企業による支配からの転換 |
3 | 産業の構造転換と日本企業の競争力 |
(1) | 「製品プル型」から「デバイスプッシュ型」への産業転換 |
(2) | 「製品プル型」産業システムにおける日本企業の強さ |
(3) | 「デバイスプッシュ型」産業システムの出現と必要される企業能力 |
(4) | 「製品プル型」と「デバイスプッシュ型」の分岐点 |
4 | 産業の特徴と日本の競争力 |
(1) | 自動車産業の特質 |
(2) | 携帯端末産業 |
(3) | 半導体産業 |
(4) | DSC産業 |
(5) | 家庭用ゲーム産業 |
第9章 | 日本企業に与えられた選択肢 |
1 | 日本企業の選択肢 |
2 | ポジショニング |
3 | 戦略的操作 |
4 | システム転換 |
5 | 「不十分な」改革と「行きすぎた」改革の狭間 |
(1) | 外部環境への適応の必要性 |
(2) | 根本的な転換が必要か |
(3) | 二つの言説 |
(4) | 日本企業の対応 |
(5) | 弱い産業の抱える問題、強い産業の抱える問題 |
(6) | エレクトロニクス産業に必要とされる改革 |
6 | おわりに |
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1 | 「ジャパン・プロブレム」をめぐる海外の論評 |
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2 | 問題の本質と歴史的転回への期待 |
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