前回のコラムでは、代理店視点による自社の評価をおこない、差別化のポイントを探ることについて解説しました。代理店によって有意な支援策は何か?ライバル企業と比べた場合、自社はどのようなポジションにいるのか?などを把握することが重要となります。今回は、前々回の「代理店のグループ分け」と前回の「代理店視点からの自社評価」を組み合わせ、グループ別の基本戦略と代理店支援策について考えてみたいと思います。
■グループ別の基本戦略類型
前々回のコラムで、取引実績や伸長率、代理店内シェアなどの定量的評価と、エリア密着度や代理店機能といった定性的評価を組み合わせ、代理店を総合的に評価しグループ分けをおこなうことを解説しました。企業が属する業界の構造やプレーヤーの数、自社ポジションによって評価項目の優先度や重み付けが異なりますが、概ね次のようなグループに分けることができます。
1.「最重点グループ」
売上規模や成長性、インストアシェア(以下ISS)、などが高く企業にとって最も重要なポジションにある代理店のグループ。戦略課題としては「ISSの維持」「代理店の取引先に対する拡販・深耕力強化」といったことが挙げられます。
2.「ISS拡大グループ」
売上規模、成長性にバラツキがあるがISSの拡大には余地が残っている代理店のグループ。戦略課題としては「規模または成長性に着目したISS拡大策の強化」が挙げられます。
3.「取引再検討グループ」
売上規模、成長性にバラツキがあり、ISSや潜在的拡販可能性が小さい代理店のグループ。戦略課題としては「取引安全性が担保できればISS拡大策を実行」となります。
4.「収穫グループ」
規模、成長性ともに中程度以下であり、ISSにバラツキはあるが潜在的拡販可能性が見込まれる代理店のグループ。戦略課題としては「特別な投資を控えながら取引を継続」となります。
5.「取引撤退グループ」
規模、成長性、潜在的拡販可能性ともに低く、ISSにもバラツキがある代理店のグループ。戦略課題としては「過剰支援の削減」「場合によっては取引撤退を検討」となります。
■グループ別に支援策をメニュー化する
グループ別の特性に応じた戦略課題を解決するために、企業として代理店にどのような支援策を用意するかといったことが次の課題となります。そのためには現状の支援策の棚卸しをおこない、代理店視点からの自社評価を加え、真に競争力があり有意な支援策を取捨選択・調整したうえでメニュー化します。
支援策を棚卸しする際に私が使っているフレームワークとして、5つの経営資源があります。一つ目が人的な支援です。営業担当者による訪問や同行営業などが相当します。二つ目が物的な支援策で、販促物やサンプル品、デモ用実機などが相当します。三つ目は金銭的支援策で、リベートや販促支援金などが相当します。四つ目は情報的支援策で、業界情報や市場・顧客情報などの提供などです。最後の五つ目は技術的支援策で、設計・見積もり機能やメンテナンス・技術指導などの提供が相当します。
これらの支援策を、各グループの戦略課題に合わせて取捨選択し、組み合わせをおこない、メニュー化します。メニュー化をおこなう際の最大のポイントとしては、支援策を実行することで戦略課題を解決することができるかどうかです。真に意味のある支援策でなければ戦略課題を解決することができず、過剰なサービスを提供してしまうことになりかねません。また、支援策を組み合わせた場合にその実行主体が企業の本社側にあるのか、それとも現場側にあるのかも重要なポイントです。この点があいまいなままに、混乱しているケースが多々見受けられます。
■支援メニューの実行体制を整える
グループ別の戦略課題、解決手段である支援策、支援策実行における本社と現場との連動・連携、この3つに一貫性が求められるのは言うまでも無いと思います。特に企業の営業現場では売上実績が欲しいがために独断で過剰な支援策を提供してしまい、戦略に一貫性がなく経営資源を浪費し、経営資源の投下に対するリターン(売上、利益、など)の効率が悪くなっているケースがあります。
これらを防ぐためには、本社側で現場をマネジメントおよびサポートする機能を持つことが必要であると考えています。支援策が有効に選択され実行されているのかどうかといったマネジメントと、円滑に実行され成果を生み出すことができるようサポートする機能です。
このような取り組みができて初めて戦略と支援策の有効性を検証することが可能となり、次の戦略やアクションにつながります。戦略と支援策と活動の一貫性・整合性、本社と現場の役割分担と連動・連携。言葉で言うのはたやすいですが、永遠のテーマでもあると感じています。
次回は、戦略の実行とそのマネジメントについて、本社と現場との役割分担と連動・連動について考えてみたいと思います。