前回のコラムでは、適切なチャネル・ミックスを構築することの重要性と、代理店チャネル活用の意義について考えてみました。今回は、代理店チャネルをフル活用し競争力を高めるためのポイントについて考えてみたいと思います。
■エリア・マーケティングから見た代理店戦略
代理店チャネルの競争力を高める方策を考える前に、エリア・マーケティングの観点から市場をどのように押さえるかについて考えてみたいと思います。
既にご存知の方も多いとは思いますが、エリア・マーケティングとは地域におけるその特性と構造を把握し、その違いに対応した「地域密着型のマーケティング」のことをいいます。エリアごとに顧客の属性(業種や規模、ニーズ、課題など)や、製品・サービスの現状の浸透度、競合企業とのパワーバランスなどに違いがあり、個別の地域特性に合わせることが必要となります。
地域特性の違いに合わせて自社の製品・サービスを顧客に届けるためには、代理店チャネルについてもこれらの違いを考慮した戦略を立てる必要があります。全国一律の戦略を立てて実行することにより成果か望みにくくなった昨今では、代理店戦略を立案する前にエリアの状況を詳細の把握し、「その市場に対してどのように自社製品・サービスを提供していくか」を定義づけることが重要となってきています。
■地域特性に合わせた代理店チャネル設計の重要性
日本全国を地域ごとに見てみるとそれぞれに特性があり、その特性に合わせた代理店チャネルを設計していくことが重要となります。では、地域特性に合っていない代理店チャネルの設計とはどのような場合でしょうか。
多く見受けられるのは以下に挙げる3つのケースです。
●ケース1:エリア需要と代理店販売力のミスマッチ
●ケース2:顧客特性と代理店特性のミスマッチ
●ケース3:顧客ニーズ・課題と代理店機能のミスマッチ
ケース1は、エリア需要に対しての効率性という問題が生じてきます。需要以上の代理店販売力(数)では明らかにオーバーストアとなってしまい、効率が悪く収益性を低下させてしまいますし、逆に代理店販売力(数)が不足してしまうと、需要に対するカバー率が低下してしまい、市場に対する自社製品・サービスの浸透度(シェア)がいっこうに上がらないことになってしまいます。
ケース2は、自社がターゲットとしている顧客の特性(業種や規模など)に不慣れな代理店を活用しようとしても、自社製品・サービスの浸透度(シェア)が上がらないことになります。例えば、学需(学校などの文教市場)中心のビジネスを展開してきた代理店に民需(民間企業)の開拓は難しいといったことです。
ケース3は、ますます高度化・複雑化する顧客ニーズ・課題に対応する必要が出てきていますが、いわゆる「御用聞き」的営業機能しかもっていない代理店では、これらの需要を取り込むことは困難であることが容易に想像できます。また、アフターフォローやメンテナンスを必要とする顧客の場合、それらをカバーできる機能を持っていない代理店では、そもそも受注をすること自体が困難であることもおわかりいただけると思います。
これらのケースを見てみると、地域特性に合わせた代理店チャネル設計の重要性がよくおわかりいただけると思います。
■地域に対して「協働」できる代理店の必要性
地域特性に合致した代理店を選別できたとしても、その代理店とどのように取り組んでいくかによって市場での競争力に差がでてきます。
一般的に、代理店は顧客の情報を企業にオープンにしたがらない傾向があります。代理店からしてみると「自分たちの顧客を横取り(直取引)するんじゃないか?」といった不安があるためです。このような状況では、企業は自社の製品・サービスがどんな顧客にどのような用途で使用されているかといった情報が入手できず、新たな製品・サービスの開発や、各種の施策(販売促進など)にも悪影響が出てきます。
また、顧客との接点を代理店だけに任せてしまうことにより、潜在的な需要を見逃してしまったり、せっかくの案件を取りきることができなかったりすることが生じます。
このようなことから、地域や顧客に関する情報を企業と代理店とで共有し、相互の役割分担を明確にしながら、協力して地域や顧客に対して働きかけていく「協働」といったことが重要となってきます。
■これからの代理店戦略コンセプト
以上のことから、これから重要度が高まってくる戦略コンセプトとして以下の2点を挙げてみたいと思います。
●コンセプト1:代理店の「選択と集中」⇒ 地域需要を効率的に取り込むことができる代理店の選別
●コンセプト2:代理店との「協働化」⇒ 地域需要を効果的に取り込むことができる代理店との取り組み
次回は、有効な代理店戦略を立案するためのお膳立てとなる代理店の評価と選別について考えてみたいと思います。