現場で使える問題解決手法・問題解決スキルを一挙公開
本連載、『問題解決』実践講座では、企業の業務改善コンサルティングを行う株式会社プロセス・ラボの代表取締役 松浦剛志氏に、ビジネスパーソンにとって必須のスキル「問題解決」を解説いただきます。
問題解決を成功させる「型(問題解決プロセス)」と「勘所(各プロセスにおけるポイント)」を、分かりやすい解説と具体的なビジネス事例を使って学びましょう。本連載を読んだビジネスパーソン自らが問題解決者(プロブレムソルバー)となれるよう、実践的な問題解決手法・スキルを網羅しています。
現場で実際に活用できる問題解決手法・スキルや問題解決事例を本連載で体感してください。
『第3回 問題解決力の奥義は「確認」にある!』
本連載の初回は問題解決のプロセス、つまり手順について解説した。
連載2回目からは、問題解決プロセスにおける各ステップのポイントを解説している。
連載3回目の今回は、問題解決プロセスの2番目のステップ
「問題確認」
のポイントについて解説しよう。
問題確認って初耳?
連載1回目で、筆者が推奨する問題解決のプロセスを伝えた。
そこでよくある質問は、「問題確認という手順は他の問題解決のセミナーや本には無いのですが・・・」というものだ。
連載3回目の今回に解説する「問題確認」という手順を、手順として切り出しているセミナーや書籍は確かに見かけない。しかし、筆者は多くの問題解決者(プロブレムソルバー)が、本来解決すべき問題でないものに力を注いでいると感じている。
「間違った問題への正しい答えほど始末に負えないものはない」
と、ピーター・ドラッカーが言うように、問題の確認はしっかりとやる必要があるのだ。
(重要な論点を手順として切り出すことは連載1回目で伝えたとおりだ)
問題確認でするべきこと
問題確認でするべきことは、「提起された問題を具体化・定量化し、問題の全体像を明確にする」ことだ。
このステップでは問題解決プロセスの最初のステップ「問題提起」で共有された問題を二つの点から確認する。
一つ目は「個々の問題(単体として)の確認」、二つ目は「問題間の関係の確認」である。
問題の現実と理想を定量化する
たった一つの問題が我々の前に現われることは稀だ。通常、複数の関連しあう問題がパラパラと我々の前に現れる。それらの問題が提起されると次は問題確認のステップだ。このステップは、個々の問題の発生を具体的・定量的に把握することからスタートする。
個々の問題に対して、その問題は本当に発生しているのか?発生頻度はどれほどか?と問う。答えは現場にある。現場での観察、蓄積された過去データに対する分析などから、問いへの答えを引き出す。
「不良品の返品が相次いでいる」のであれば、その発生頻度について、現実の数値を現場で収集する。
しかし実際には、問題の定量化は骨の折れることも多い。そのようなときに、定量化のために膨大な時間を費やすことは、問題解決において本末転倒になりがちだ。定量化が厄介であれば、客観的な定量データに替えて、感覚値を利用しても良い。ただし、その際大切なことは、問題に関係している者の多くが合意できるレベルの感覚値で代替することだ。
定量化した内容は、先に問題を書き出したポストイットの裏側左半分に書き込もう。
続いて、この問題に対する理想の状態を設定する。
以前ほどうまく行ってない、というなら過去の状態を理想として設定する。
他社はうまくやっているのに自社ではイマイチだ、というなら他社の状態を理想として設定すればよい。
しかし、このように簡単に理想が設定できるものばかりではない。その場合、理想設定は「合意できるレベル感」で構わない。
これくらいを実現できれば良い、と関係者が合意できれば、それを理想とする。
定量化した理想は、問題を書き出したポストイットの裏側右半分に書き込もう。
(※理想も現実も、ポストイットの裏側ではなく、対応させる別紙に書いてもOKだ)
重要性と緊急性を評価する
次に個々の問題の重要性と緊急性について評価する。この手法は一般的であるが、実際には多くの人が頭を悩ませる。しかし、その悩みは、たった二点に注意することで簡単に回避できる。
まず重要度。これは、理想と現実のギャップの大きさのみによって判断すれば良い。ついつい、その問題が引き起こす新たな問題の重要さを考えがちだが、この点は「問題間の関係の確認」で整理されるので、今は考えてない!
「クレームが月間100件発生しているが、理想は10件以下にしたい」というなら、あくまでも100件と10件以下の違いがギャップであり、このギャップの大きさを評価する。ギャップの大きさは3ランク(大・中・小)程度が適当だろう。その判断基準も総意で決めれば十分で、必要以上の議論時間をこの論点にかけるのは非生産的だ。
一方、緊急度はどうか?緊急度は、問題が発生の臨界ポイントに近づいているか、または解決の約束期日が迫っているかの視点で考えればよい。重要な問題だから解決が急がれると考えるのは間違いだ。ここでも3ランク「急・中・緩」程度を設定し、総意で決定すれば十分である。
この2つの点に留意して重要度と緊急度を整理したら、問題が書き込まれたポストイットを、2つの視点から可視化しておくと良い(手法の詳細については機会があれば解説しよう)。
問題間の関係の確認
個々の問題の確認を終えたら、次にそれらの問題が相互にどのような関係になっているのかを整理する。
問題というのは大抵単体では存在せず、複数の問題が相互に関係し合って我々に認知される。通常、問題間の関係とは因果関係である。因果とは原因と結果の関係で、原因は結果よりも時系列的に前に存在する。
確認済の問題のポストイットを下から上に(あるいは左から右に)、因果関係の時系列で未来に向って並べ、繋がりを線で結び樹形図のようにしていく。
ここでは樹形図を未来(結果)にむけて伸ばしていくのがポイントだ。ついつい、過去に向って原因を掘り下げていきたくなるが、その作業は、後の「原因分析」で実施するので焦ってはいけない。
問題確認から目標設定にむけて
以上の作業が終われば、
・ 個々の問題は具体化・定量化され
・ 重要度・緊急度が見える化され
・ 問題間の因果関係は樹形図の様相で見える化されているだろう。
問題解決プロセスの2番目のステップ、「問題確認」のポイントを理解できただろうか。
次回は3番目のステップ、「目標設定」のポイントを指南しよう。
プロセス・ラボ社は企業の業務現場、製造現場、システム導入・運用の現場における業務改善コンサルティングを手掛ける。
業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。
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