現場で使える問題解決手法・問題解決スキルを一挙公開
本連載、『問題解決』実践講座では、企業の業務改善コンサルティングを行う株式会社プロセス・ラボの代表取締役 松浦剛志氏に、ビジネスパーソンにとって必須のスキル「問題解決」を解説いただきます。
問題解決を成功させる「型(問題解決プロセス)」と「勘所(各プロセスにおけるポイント)」を、分かりやすい解説と具体的なビジネス事例を使って学びましょう。本連載を読んだビジネスパーソン自らが問題解決者(プロブレムソルバー)となれるよう、実践的な問題解決手法・スキルを網羅しています。
現場で実際に活用できる問題解決手法・スキルや問題解決事例を本連載で体感してください。
『第1回 問題解決の手順/問題解決のプロセス』
職場へいくとそこには問題が山積だ。ビジネスは問題解決の連続だといっても過言でない。問題解決の名手になりたいと、ビジネスパーソンであれば誰しもが考えるだろう。名手になるには、まず「型」を身につけることが近道だ。
1つ1つの問題はすべて異なり、同じ問題が同じ状況で発生することは二度とないかもしれない。しかし、問題解決には、ある程度決まった手順、つまりプロセスがあり、さらに、ここに気をつけるとぐんと解決へ近道になる勘所、つまりポイントがある。
型とは、このプロセスとポイントである。
連載初回の今回は問題解決のプロセスについて解説する。
次回からは各プロセスにおけるポイントを解説する。
問題解決とは何か?
そもそもの話し・・・、問題とは望ましい理想の姿と、そうでない現実の姿のギャップである。
2つの姿を定量的に把握していれば問題は「差」である。売上100万円が理想だが、実際には80万円というなら、その差の20万円が問題だ。
2つの姿を定性的に把握していれば問題は「相違」である。本来、新規商品を発売開始しているのが理想だったが、実際にはできてないというなら、その相違が問題だ。
問題解決とはこのギャップの解消である。
一般的な問題解決のプロセス
さて、その問題解決のプロセスであるが、前述の通りある程度決まったものがある。一般的には次のようなプロセスだ。
1.問題の特定
2.原因の把握
3.目標の設定
4.解決案の作成
5.解決案の実施
6.解決の確認
問題解決の書籍を読んだ経験のある人や、セミナーに参加した経験のある人の中には、
→ 問題の類型によってプロセスが異なると習った
→ 習ったプロセスと微妙に違うと思った
方がいるかもしれない。
問題の類型と解決プロセス
問題の類型別に、解決プロセスを習った方は、
1. ギャップを埋めるにはどうするかという解決策の立案に重点をおくべき問題のタイプ(一般に課題設定型・理想追求型・リスク対応型などと分類される)
2. ギャップを生じさせているor生じさせるのは何かという原因追究に重点をおくべき問題のタイプ(一般に原状回復型・発生型などと分類される)
という2類型を中心に習っただろう。この2つの類型の大きな違いは原因追究の有無にある。後者の、原因追究をすることで問題解決を進めるプロセスは、身近な仕事の中でも例が多く馴染みがあるだろう。一方で、原因追究をしても意味がない問題も確かに存在する。
天変地異に端を発する問題は原因追究をしても意味がなく、打ち手(対応策)を考えるしかないだろうし、新たに設定した「売上を来年は2倍にする」という目標(現状のままでは2倍にならないという現実の延長と理想の間にギャップがある)に対しては原因を考えるのではなく、どのように目標達成ができるかを考えるしかないと感じるだろう。
しかし、実際には1つの問題に対して、原因究明をして問題の発生を防ぐ打ち手と、問題の発生を受け入れ対応の打ち手を用意する、2つの打ち手が共存することは多い。
例えば、製造工程の不良品発生に対して、発生原因を突き止めて発生を防ぐことも、アウトレットで売るなど不良品の販路をつくるという対応策を打つことも同時に検討するように。
したがって、問題の類型によっては、原因究明をしないプロセスがあるという理解ではなく、あくまで、基本は原因究明を含むプロセスなのだと理解しておこう。
問題解決プロセスの誤差
一般的な問題解決プロセスとして紹介したものが、「おや?私が習ったプロセスと違う!」と思ったとしても心配は要らない。世の中ではこのプロセスについて相当種類のものが提示されているが、どれも大差はない。それゆえ「ある程度決まった」プロセスなのだ。
ここでは「どのようなプロセスが正解か?」という議論は意味がない。自分の会社で独自のプロセスがあるのなら、それが一般的なものと大きく異なっていない限り、自社のものを利用すればよい。
問題解決プロセスの共通認識
問題解決プロセスの誤差を論じるよりも大切なことは、問題解決にかかわる人たちが、プロセスについて共通の認識を持つことだ。
つまり、問題解決を進めていくうえで「自分たちはどんなプロセスで進めていくのか」「各プロセスでは何をすべきか」「自分たちが今どこのプロセスにあるのか」を同じように理解していることが大切になる。
そもそも、なぜ、プロセスに分けて進めるのかといえば、論点を切り分けて進めたいからに他ならない。私たちは仮にどんな優秀なメンバーを集めたとしても、複数の論点を同時に議論することは難しい。ちょうど、右手と左手で違う絵を描くようになる。
私たちは論点に集中して、議論をすすめるためにプロセスに分けているのである。したがって、プロセスの誤差について論じるよりも、如何に共通の認識をもってプロセスを進めるのかを考えるほうが遥かに重要である。
本連載における問題解決プロセス
さて、ここまで、問題解決のプロセスについての話を進めてきた。
「世の中にはこのプロセスが相当数ある」と前述したが、私が実施する問題解決手法の研修や、実際の問題を取り扱うプロジェクトのファシリテーションをする際には、図1のプロセスを提唱している。
次回以降は、このプロセスに沿って、勘所、つまりポイントを解説していこう。
プロセス・ラボ社は企業の業務現場、製造現場、システム導入・運用の現場における業務改善コンサルティングを手掛ける。
業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。
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