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仕事の流れを「見える化」する

仕事の流れを「見える化」する

第1回 なぜ、業務フローチャートは「厄介モノ」なのか?

2008 年 12 月 26 日

Cc: Photograph by Savannah Grandfather

業務フローチャートは業務マニュアルや業務改善、日本版SOX法対応など、さまざまな用途で利用されていますが、作成や修正が煩雑で困難という大きな課題があります。

本連載第1回目は、業務フローチャートについて理解すると同時に、業務フローチャートが抱えるこれらの課題について整理してみましょう。

●業務フローチャートの構造と特徴

 業務フローチャートとはそもそもどんなものでしょうか。

一般的に業務フローチャートは、「業務プロセスの手順ないし帳票・データの流れを表した図。定められた記号を線・矢線などで接続したもので、業務プロセスにおける手続きや職務間の関係、帳票やデータと作業のつながりを分析するために使われる」と説明されます。

もう少し分析的ないい方をすれば、業務プロセスにおいて、その構成単位である「作業」を、「誰が・何を・どうする・いつ・どうやって・どのくらい」という「要素」に分解し、それに「流れ」を加え、視覚的に理解しやすい形に再構築したものだといえるでしょう。

ここでのポイントは「要素」と「流れ」です。

まず「要素」について説明します。業務フローチャートの様式を決定する際には(1)絶対的記載要素(必ず記載する要素)および補助的記載要素(絶対的記載要素を補完する要素)を分類し、(2)それらの要素をどのようなルールの下で記載するのか決定します。

はじめに、担当者や担当部門別にスイムレーン(縦長または横長に区切られた枠)を描いた瞬間に「誰が」が、また、作業内容を描くと決めた瞬間に「どうする」が絶対的記載要素となります。さらに、「どうする」の対象物である書類やデータベースなどのうち、重要なものだけを記載すると決めると、「何を」が補助的要素となります(上記1)。その後、「担当者別に区切られたスイムレーンの中に記号として記載」などのルールを適用しながら要素を描いていきます(上記2)。

次に「流れ」についてです。「流れ」を示す要素として、「どうする」(作業)を利用するのが一般的ですが、「何を」(書類やデータベースなどの作業対象物)により「流れ」を示す手法も散見されます。いずれにおいても、この「流れ」は時系列の前後関係を表すことになります。

●ケーススタディ:一般的な業務フローチャート

具体的な例で考えていきましょう。以下の例は、商社における受発注の業務内容を各担当者にヒアリングした結果です。

1. 塚口:
私が、随時FAXで送信されてくるお客さまからの注文書を受け取っています。FAXを受け取ると私は、注文書に日付印を押して、その後、すぐに森山さんのIN-BOXに保管します。

2. 森山:
私の注文書に関する仕事は、まず形式的な不備をチェックして、問題がなければ注文内容を社内システムに入力します。次に、その顧客の与信残高一覧を社内システムから印字して、注文書にセットし、各営業担当者に渡します。

3. 田中:
私たち営業担当者は注文書を受け取ると、個社別の信用調査ファイルを棚から取り出してきます。新規の注文により発生する売掛金が、すでに稟議済みの与信枠の範囲に収まることと、注文内容や仕様が稟議済みであるかも確認します。問題がなければ、注文書に捺印して、森山さんに戻します。

この一連の業務を、要素については次のような記載ルールで、流れについては「どうする」を線でつなぐことで、業務フローチャートを作成するとしましょう。

【要素】 【分類】 【ルール】
誰が 絶対的記載事項 スイムレーンにより定義
どうする 絶対的記載事項 「誰が」のスイムレーン内に作業を体言止めで記載
何を 補助的記載事項 紙ドキュメント・情報システムのみを作業のそばに記号として記載

これにより、図1のような業務フローチャートが出来上がります。業務フローチャート作成に慣れた人は、上記の例を読み、おそらくこれに近いものを思い浮かべたでしょう。

図1 一般的業務フローチャート
一般的業務フローチャート

●業務フローチャートの課題
業務フローチャートは、冒頭に挙げた業務マニュアルや業務改善、日本版SOX法対応以外にも、上場審査、業務システム導入時などにも幅広く利用されています。しかしこれまで見てきたように、「組織や担当者ごとに区切られた枠線の中で、一定方向に作業の流れを描いていく」という以外に、従来、一般的に認知された作成方法のルールはなく、書き手の創意工夫に依存したものでした。

今回のケーススタディのようにシンプルな場合は、この「一般的に認知されたルール」だけで記載しても大きな問題はありませんが、現実の業務プロセスを業務フローチャートにしようとすると、どこまで多く業務バリエーション(例外処理)を取り込み、どこまで具体的かつ詳細に内容をとらえるかについて、作成者は悩むことになります。結局、作成者の判断により、業務フローチャート上の情報の細かさが決定されることになり、その結果、読み手にとっては「大ざっぱすぎてわからない(使えない)」「細かすぎてわからない(使えない)」という様々な反応を引き起こすことになるのです。

また、これまで見てきたタイプの業務フローチャートでは、多くの業務バリエーションを盛り込もうとすればするほど、それを業務フローチャート上に表現するのに手間と時間がかかることになり、日々の業務の変化に合わせて業務フローチャートを更新していくことはさらに困難になります。

そしてこのことが、従来から多くの人を悩ませ、業務フローチャートを「作成に手間がかかるのに結局使えない」という「厄介モノ」にしてきました。

 つまり、
(1) 業務バリエーションをすべて盛り込むにはどうしたら良いのか?
(2) 業務フローチャートの構成要素である作業をどの程度の大きさ(粒度)に定義するのか?

という2つの点を、誰でも簡単に乗り越えることができる業務フローチャートの書き方がなければ、業務フローチャートはいつまでも「厄介モノ」なのです。

では、業務バリエーションをその気になればすべて盛り込め、誰が描いても粒度を一定にすることのできる、業務フローチャートの簡単な書き方の公式はあるのでしょうか?

本連載の初回は、従来一般的に作成されてきた業務フローチャートの特徴とその課題について理解しました。次回以降、従来の業務フローチャートの課題を克服し、簡単で更新もしやすく、誰でも身に付けて日常的に活用できる新しい業務フローチャートについて、その発想ポイント、作成方法、活用方法を具体的に説明していきます。

株式会社プロセス・ラボ
プロセス・ラボ社は企業の業務現場、製造現場、システム導入・運用の現場における業務改善コンサルティングを手掛ける。
業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。

(コンサルティングメニュー)
■講義中心に学ぶ→業務改善手法の研修 ■手を動かしながら技術を身につける→フローチャート作成講座/業務改善ワークショップ ■改善成果をあげながら体得する→業務改善コンサルティング/システム(ERP)導入コンサルティング/業務フローチャート作成請負

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