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カナモリさんのいうとおり~ season2

カナモリさんのいうとおり~ season2

スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由

2009 年 1 月 27 日

Cc: Photograph by Wiedmaier
【編集部からのコメント】
出店しないと成長できない。出店しすぎると陳腐化してしまい、”らしさ”を損なわれていく。う~ん悩ましい。これ誰しもが通る道なのでしょうか?ほんのちょっと前まで都心でしかお目にかからなかったスターバックス。今や郊外のショッピングセンターも含め乱立している感じですね。スターバックスはどうするのでしょうか?

バンクーバーのダウンタウン。スターバックスから向いのスターバックスを撮った。
Cc: Photograph by orangejack

スターバックスの大ファンであるが故に、何度もその問題点を指摘してきた筆者であるが、ある記事で問題の本質に触れることができた。その記事の要点を元に、再度、ここで警鐘を鳴らしたい。

スターバックスが初のアジア圏進出を果たしたのは1996年のこと。日本第一号店は銀座松屋の裏の小さな2階建て店舗だった。エスプレッソを主体とした「シアトルスタイル」と呼ばれるカフェの新規性がウケ、多くの客がつめかけた。筆者もその一人である。
以後、破竹の勢いで出店攻勢が続き、新たなカフェの形態の先駆けとして隆盛を誇ったのである。

スターバックスの成功のヒミツは何であろうか。
それは、今まで満たされていなかった顧客ニーズを見事につかみ取ったことだ。
96年当時は、旧来の「喫茶店」は衰退し、ドトールやベローチェに代表される新興の「低価格カフェ」が伸長していた時期だった。
マーケティングの4P的にいえば、提供される製品は旧来の喫茶店はサイホンで淹れたり、様々な工夫をしていたが、低価格カフェは機械で淹れる簡便なものだ。コーヒーのラインナップとしては、双方とも「ブレンド」か「アメリカン」ぐらいのバリエーションである。
価格は旧来の喫茶店が500~700円。低価格カフェは150円~180円。
それに対して、新たに日本に上陸したスターバックスは、エスプレッソマシンで淹れるコーヒーに、様々なフレーバーやトッピングを施し、最初のうちは客がうまくメニューを選べないほどのバリエーションを展開して見せた。その魅力的な商品を、「本日のコーヒー」であれば280円。トッピングやバリエーションを指定してもだいたい500円弱という中間価格帯で提供したのだ。

では、スターバックスの価値、言い換えれば「らしさ」はコーヒーのバリエーションと価格だけの魅力なのであろうか。いや、そうではない。
スターバックスという「商品」を構成する魅力は、ぞのコーヒーを淹れる従業員も要素の一つだ。「バリスタ」という社内資格を取得しなければコーヒーを入れることは許されない。創業の理念を共有し、技を磨き、明るく顧客対応をする。これは世界共通の同社の魅力であり、「らしさ」の中核をなすものであろう。

魅力的な人材が活躍するには、最高の舞台も重要だ。店舗。客の側から見ればむしろこちらがコーヒーという商品と同等以上に重要な要素かもしれない。旧来の喫茶店の、どこか垢抜けない店舗とも、低価格カフェにおけるカウンターのスツールに腰掛けると、両隣の客と肘が触れてしまうような狭さとも異なるゆとりの空間。
ゆったりとした椅子やソファー、テーブル間の距離も十分取ってある。さらに照明や店内音楽、壁に掛けてある絵画にまでオシャレさに気を遣って、「店内空間も付随機能としての商品価値の一部である」と十分認識された設計であった。

前文の文末はあえて、「であった」とした。過去形だ。今、スターバックスでこの原稿を書いている。狭い。隣の客の体温が伝わってくる程の席の詰め込み方だ。かつての各店に置かれていたソファーなど跡形もない。たまにソファーのある店も見かけるが、数が少なくなり、そこに座れたためしはない。安らげない。下手をすると、かつて商標をめぐって訴訟問題になった、模倣的存在であるエクセルシオールカフェの方がゆったりしている店も多い。

商品を構成する価値構造において、「付随機能」は、それがなくとも「中核価値」に影響は及ぼさない。この場合の中核価値とは美味しく、様々なバリエーションが楽しめる、適正な中価格帯のコーヒーである。
しかし、「ゆとりの空間」という、スターバックスの「らしさ」を構成する付随機能がどんどん失われ、詰め込み型の店舗ばかりが増えていくのは事実だ。価値構造の一部が失われていっている。その原因はどこにあるのかといつも考えていたが、ある記事でようやくその理由がわかった。」

<スターバックスに“死角”はあるのか?(Business Media 誠)>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/08/news011_2.html

記事によると、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は以下のように指摘する。
<日本と米国のスターバックスの間には「○○年○○月までに、これだけ出店しなければならない」という契約がある。契約内容を見ると、日本での出店数が目標を下回った場合、不足店舗分のライセンス料を米国のスターバックスに支払う必要がある>という。

つまり、「出店目標ありき」なのであったのだ。「なぜ、こんな場所に?」と思わざるを得ない狭小な場所にも出店がなされるようになった。どう考えても「ゆとりの空間」は確保できない。「いつでもどこでも、スターバックスを楽しめるようにかなぁ?」などとも思っていたのだが、どうにも納得ができないでいたが、ようやく得心がいった。

「米国との契約」は大切かもしれない。しかし、米国においては強気の出店攻勢が裏目に出て、大減益に陥り、店舗も大幅な縮小を余儀なくされている。
日本市場においてはまだまだ成長基調にあるが、前出の記事で山口氏は<出店すればするほど出店ペースは鈍化していく。そこでライセンス料などの契約によって、収益が悪化する可能性が高い>と指摘している。

スターバックスの熱烈なファンとして言いたい。「ゆとりの空間」という付随的であるが「らしさ」を構成する重要な要素を失わないで欲しいと。

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