ビジネスにおいてレギュレーションを把握し、遵守することは大前提ですが、その制約条件の中で知恵を使って考えてみると意外に創造的なアイデアが生まれることがあります。ピッチいっぱい使ってサッカーをするように、レギュレーションを読み込んで、価値ある余白部分を探しましょう。でも境界線をはみ出すとコワ~イなにかがいるので注意してくださいね。
ちょっと面白く、少しモノゴトの考え方のヒントになるニュースがあったのでご紹介。
<燃費の良さを競うレースで、7000ccの『コルベット』が優勝>
http://wiredvision.jp/news/200810/2008101522.html
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このタイトル、ネットのニューズにありがちな「釣り」効果バッチリだ。
「コルベット」なる車が、いかにアメリカ的な男臭くもスパルタンで荒々しい車であり、ガソリンを振りまくようにして走る車なのだと知らない人でも「7000cc」という排気量を示す数字を見れば、タイトルの非現実性は容易に想像できるからだ。
しかし、これは「釣り」記事ではない。事実なのだ。
「燃費の良さを競うレース」は「MPG Marathon」。
レースは「ハイパーマイル」、つまり「燃費を向上させる運転の技術」を競い合うものだ。記事に明記されていないが、そのため、車体はノーマルの状態だろう。
ノーマルの状態で、運転技術によって<1ガロンのガソリンでどれだけの距離を走れるか>を競う。
総合優勝は1500ccエンジンを搭載したトヨタの「ヴィッツ」だったという。これは、ある意味、当たり前な気がする。但し、<84.66マイル毎英ガロン(1リットルあたり29.97キロメートル)>という記録であり、それは<トヨタ自動車による推定燃費を31.81%上回る>というから、ドライバーの技量は相当な物だ。
しかし、キモなのはこのレースのレギュレーションだ。
<自動車メーカーの推定燃費からどの程度伸ばせるか>という「燃費向上率部門」というものがある。
コルベットの推定燃費19.2マイル毎英ガロン(1リットルあたり約6.8キロメートル)だということだ。以前、コルベットのオーナーが知人におり、乗らせてもらったことがあるが、恐ろしく燃費が悪い車なのだ。渋滞にはまるって止まっている間にみるみる燃料計のメーターが下がっていくぐらいだ。
しかし、それだけ燃費の悪い車であれば、技量を活かす余地もあるということではないか。
豪華に毎日1500円のランチを食べていた人が、900円以内に40%節約するのと、もともと500円以内に切り詰めていた人が350円に30%節約するのでは絶対に前者の方が楽だ。
そうして、コルベットで実に、メーカーの<推定燃費19.2マイル毎英ガロン(1リットルあたり約6.8キロメートル)を61.26%も上回って>燃費向上率部門で優勝したということだ。
つまり、レギュレーションは穴が空くほどよく読めということ。また、主催者に確認するのも良いだろう。
北京オリンピック前の「スピード社の水着騒動」は記憶に新しいだろう。日本は「異種の素材使用禁止」というレギュレーションを信じて疑わなかった。スピード社はあえてそのギリギリのところで採用し、「金メダル製造水着」を作り上げた。
このコルベットのドライバーがどのように確認をしたのかは記事からはわからないが、運転の技量もさることながら、レギュレーションのうまい解釈が勝負を決めたと言えるだろう。
効率化の余地という意味で言えば、国別の温暖化ガス削減目標もそうだ。
日本はレギュレーションを作る話し合いの段階で失敗をしたのだ。
レギュレーションはそのまま受け入れてしまう習慣が日本は強いように思う。
「7000ccのコルベットでエコドライブ」はそんなことを考えさせてくれた。