戦略経営論
戦略経営論
著者:
ガース サローナー
ジョエル ポドルニー
アンドレア シェパード
出版社:東洋経済新報社
出版日:2002/07
Amazon商品の説明より
アメリカのビジネススクールには戦略に関する授業が用意され、経営学修士(MBA)コースの目玉になっている。いわゆる「戦略経営論」(ストラテジック・マネジメント)である。本書はスタンフォード大学ビジネススクールで、その「戦略経営論」を教えている3人の教師が、授業用に用意した講義ノートをまとめたものだ。
特徴としては、何よりもまず内容の包括性である。取り上げているトピックが網羅的なため、訳書で500ページを超える大部の本になっている。第2に、需要サイドの収穫逓増市場に焦点を当てた第12章など、新味のある説明が盛り込まれている。付録に添付されている「ゲーム論」の戦略論への応用に関するノートも有用だ。第3に、分析ツールの細かな手法論には立ち入らずに、「戦略的に考える思考法」を強調している点も特徴といえる。第4に、議論の基盤がはっきりしており、ミクロ経済学、特に産業組織論と組織論の研究の2つが理論的基盤となっている。この点はハーバード大学とは違い、理論志向を強くもったスタンフォードの教師らしい。第5に、事例が豊富であり、特にパソコンのデルやコンパック、全米を代表する本屋のボーダーズ、航空業界トップのサウスウエスト航空などがおもしろい。日本企業についての分析もある。
以上のとおりだが、その特徴は弱みにも通じる。取り上げているトピックがあまりに広範なせいか、記述の内容が総じて常識的で、単純で、議論が平板に見える。また、経営戦略の最新の手法や関連コンセプトに関心がある向きには、不満が残る内容だろう。 ビジネススクールの教室では、教師よりも学生が主役だ。彼らのディスカッションは刺激的で、それに比べると教師のレクチャーはしばしば添え物のように見える。その添え物だけを束ねたような印象が残る。(榊原清則)
目次
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| 訳者まえがき |
| 原著まえがき |
第1章 | 戦略的経営とは |
1.1 | 戦略的経営 |
1.2 | 事業戦略の役割 |
| 事例:デルコンピュータとコンパックコンピュータ |
| 事業戦略のダイナミクス |
| 戦略計画と戦略的思考 |
1.3 | 組織と目標 |
| 業績:全体の目標 |
| 企業とマネジャー |
1.4 | ゼネラル・マネジャーの力 |
1.5 | 本書の構成 |
第2章 | 事業戦略 |
2.1 | 事業戦略とは |
| 目標 |
| 範囲 |
| 競争優位 |
| ロジック |
2.2 | 戦略とミッション・目標・価値観・ビジョンとの関係 |
| ミッション・目標・価値観 |
| ビジョン |
2.3 | 戦略文章 |
| 戦略を明確に文章化することの利点 |
| 戦略文章の形態と用途 |
| ボーダーズ・ブックスの事例 |
| 戦略立案:戦略プロセス |
| 戦略の明確化 |
| 戦略の評価:ロジックのテスト |
| 戦略プロセスと戦略の転換 |
第3章 | 競争優位性 |
3.1 | 価値と競争優位性 |
3.2 | 競争優位性への二大ルート |
| ポジション |
| 組織能力 |
3.3 | 持続的競争優位性 |
| 持続的競争優位性としての組織能力 |
| 持続的競争優位性としてのポジション |
3.4 | ポジションと組織能力の関係 |
3.5 | ポジション,組織能力,「資源をベースとして企業を考えるという見方」 |
3.6 | コスト-品質のフロンティアと競争優位性 |
| 製品品質とコスト |
| コスト-品質のフロンティア |
| 事例:コスト-品質のフロンティアで競争優位性を描く |
第4章 | 内的コンテクスト:組織構造 |
4.1 | 組織設計と競争優位性 |
4.2 | サウスウエスト航空の戦略と組織 |
| サウスウエスト航空の戦略と業績 |
| サウスウエスト航空の組織 |
| 他社との比較 |
| 要約:一貫性と連携 |
4.3 | 組織設計の課題 |
| コーディネーション問題 |
| インセンティブ問題 |
4.4 | 課題への挑戦 |
| アーキテクチャ:構造 |
| アーキテクチャ:給与と報酬 |
| ルーチン |
| カルチャー |
4.5 | ARC分析 |
第5章 | 組織と目標競争優位性 |
5.1 | 戦略と組織の整合 |
| ARC分析を用いて戦略的整合性を評価する |
| :サウスウエスト航空の事例再考 |
| その他の事例:ソニー,アップルコンピューター,シリコングラフィックス |
5.2 | 競争優位性の構築と創造 |
| 「活用型」と「探索型」 |
| 相互依存と密接な結合 |
| 組織スラック |
| 中央集権管理 |
| 探索型と活用型のARC |
5.3 | 探索と活用の組み合わせ |
5.4 | 組織変革にともなうコスト |
第6章 | 外的コンテクスト:業界分析 |
6.1 | 業界の特性が企業の業績に与える影響 |
6.2 | 業界分析 |
6.3 | 業界のフレームワーク |
| 価値の創造:業界の潜在的収益力 |
| PIEの決定要因 |
| 価値の獲得:PIEの分割 |
6.4 | 業界の定義 |
| 「類似の」代替品をベースとした業界の定義 |
| 補完品からなるシステム業界の定義 |
第7章 | 競争のスペクトラムとニッチ市場 |
7.1 | 競争のスペクトラム |
| 市場構造と企業行動 |
7.2 | ニッチ市場と製品の差別化 |
| 市場ニッチの構築・防御・利用:ベネフィットとギャップの事例 |
7.3 | 消費者選好と製品差別化 |
| 選好と製品 |
| 水平方向,垂直方向の製品差別化 |
7.4 | 差別化と競争 |
| ニッチと隣接企業 |
| 差別化による競争緩和 |
| 価格競争とマーケット・シェア |
7.5 | 製品ポジショニング |
| 補論:独占,競争,ニッチ市場 |
| 独占 |
| 完全競争 |
| ニッチ市場 |
第8章 | 集中市場における競争 |
8.1 | 寡占産業:戦略的相互作用の要素 |
| アクションの違い |
| タイミング |
| プレーヤー |
| 情報 |
| くり返し |
| 要約 |
8.2 | 支配的企業の構造 |
8.3 | 反トラスト |
| 共謀と反トラスト |
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第9章 | 新規参入と既存企業の優位性 |
9.1 | 既存企業の優位性 |
| 規模の優位性 |
| 累計投資による既存企業の優位性 |
| 顧客ロイヤルティによる既存企業の優位性 |
| スイッチング・コストと需要サイドの収穫逓増による既存企業の優位性 |
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| サンクコストからくる既存企業の優位性 |
| 企業の事業範囲 |
9.2 | 参入障壁の具体例 |
9.3 | 既存企業による優位性の戦略的構築 |
| 製品スペースを埋める |
| 契約,垂直統合による参入阻止 |
| 参入を阻止するシグナリング |
| 参入障壁と反トラスト |
第10章 | バリューチェーンにおける価値の創造と獲得 |
10.1 | 価値の創造と獲得 |
10.2 | バリューチェーンと買い手・売り手の交渉力 |
10.3 | 価値の獲得 |
| 買い手・売り手の交渉力がない場合の価値獲得 |
| 交渉力のある売り手(または買い手)が1社の場合の価値獲得 |
| 買い手と売り手に交渉力がある場合の価値獲得 |
| 他セグメントの交渉力を減らす |
10.4 | 価値の創造 |
| 価値創造の機会:コーディネーション問題 |
| 価値を創造する契約:インセンティブ問題 |
第11章 | 変化する環境における戦略的経営 |
11.1 | アメリカ自動車業界の変遷 |
11.2 | 変化と競争優位性 |
11.3 | 産業ライフサイクル |
| 勃興期 |
| 成長期 |
| 成熟期と衰退期 |
11.4 | 産業組織の進化 |
| 水平組織と垂直組織 |
| 産業構造がもつ組織への意味合い |
11.5 | 戦略的変革のマネジメント |
| 戦略的変革の障害を克服する |
| 不確実な状況下での経営:シナリオ分析 |
| 戦略的変革の事例 |
第12章 | 需要サイドの収穫逓増市場における戦略 |
12.1 | DSIRの源泉 |
| 互換性による便益 |
| ネットワークによる便益 |
12.2 | DSIRのある市場における競争 |
| 利用者基盤とその将来性 |
| DSIR確立のための競争戦略 |
12.3 | 部品システム |
| システムの互換性 |
| 市場ポジションの活用 |
12.4 | 技術の採用 |
12.5 | 採用プロセスのマネジメント |
| 推進力を生むマーケティング |
| 評判の活用 |
| オープン・スタンダードへのコミットメント |
| 影響力をもつ買い手の獲得 |
| 事前登録 |
| 海賊版に目をつぶる |
| リース |
| 価格へのコミット |
12.6 | 標準設定プロセス |
第13章 | グローバリゼーション |
13.1 | マネジャーへの意味合い |
13.2 | グローバリゼーションによる戦略的メリット |
13.3 | 産業と経済のグローバリゼーション |
13.4 | 戦略的課題 |
| 地域への対応 |
| グローバル・レベルの効率 |
| グローバルなコンテクストにおける学習 |
13.5 | グローバルな課題を解決するための組織設計 |
| 連邦型と中央集権型 |
| 中庸の道 |
第14章 | 全社戦略:多角化企業における価値マネジメント |
14.1 | 全社戦略のフレームワーク |
| 戦略的波及効果のマネジメント |
| 全社戦略のフレームワーク |
14.2 | 全社戦略は価値を付加するか |
| 多角化企業の業績 |
14.3 | 戦略的波及効果と競争優位性 |
| 波及効果の認識とマネジメント |
| 波及効果の源泉 |
14.4 | レバー:資源配分と組織設計 |
| 資源配分 |
| 組織設計 |
| 企業のめざす方向 |
第15章 | 戦略プロセス |
15.1 | 戦略プロセスの原則 |
15.2 | 事業戦略プロセス |
| 戦略の明確化 |
| 戦略の評価 |
| 戦略オプションの創出と評価 |
| 戦略の選択と伝達 |
| 急速に変化する環境における戦略プロセス |
15.3 | 戦略計画 |
15.4 | 戦略の進化 |
| 自立的・意図的な戦略の変更 |
15.5 | 全社戦略プロセス |
| 戦略的に独立した事業の集合体における戦略プロセス |
| 戦略的相関関係のある事業をもつ企業の戦略プロセス |
| ゼネラル・マネジャーの役割 |
15.6 | 結論 |
付録 | ゲーム理論を戦略的経営に応用する |
A.1 | 有名な事例:囚人のジレンマ |
A.2 | ナッシュ均衡と複占 |
A.3 | くり返しの効果 |
A.4 | 信憑性,コミットメント,柔軟性 |
| 柔軟性の価値:リアル・オプション |
| コミットメントと信憑性 |
A.5 | 情報の非対称性がある場合の戦略的行動 |
| シグナリング |
| スクリーニング |
| 評判 |
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| 和文索引 |
| 欧文索引 |
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