企業が顧客に提供する価値には商品、価格、サービスなどなど様々な要素の組み合わせがありますよね。結局のところ顧客がベネフィット(利便)として感じるものであればなんだって価値になる訳です。だから企業は従来の狭い枠組みで自社の提供価値を考えるのではなく、自社の強みと競合企業との比較の中で新しい提供価値を再発見するべきですね。不況で投資もあまりできない時代ですからマーケティングもMOTTAINAIでいきましょう。
巨大スクリーンで3D映像を楽しめます。
※記事とは関係ありません
でも3Dで会社説明したら話題になりそうですね。
<映画館で会社説明、劇的効果>
http://company.nikkei.co.jp/news/news.aspx?scode=8053&NewsItemID=20081024NKE0480&type=2
シネコンの経営不振に対して設備稼働率を上げるための目的外使用。そう言ってしまえばそれだけなのだが、実はこうした動きは、設備産業において散見される。
しかし、思いつきでやってもうまくいくものではない。
<住友商事は九月末、子会社が運営する映画館「ユナイテッド・シネマ豊洲」(東京・江東)で会社説明会を開催した。大スクリーンと音響システムを使って映画の予告編さながらの映像を上映し、住友商事の八事業部門を紹介>とある。
参加した学生からの学生がこの施策の本質的な効果を示している。<座り心地が良くて眠そうだった学生も「映像や音がすごい迫力で目が覚めました」と感心していた> と。
別の動きもある。<ワーナー・マイカル、企業イベントで映画館「貸し切り」>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081107AT3K0600Y06112008.html
<映画館をイベント会場などとして企業に貸すサービスを始める。第1弾として、11月にさいたま市と埼玉県羽生市の映画館で製薬会社主催のセミナーを開く>他にも<主婦向けのセミナーや学生向け会社説明会など幅広い目的での利用を見込む>という。
映画館というものの製品特性を分析してみる。中核価値は「映画が見られる」である。しかし、昨今、レンタルDVDもあり、ホームシアターも普及している。しかし、それらではやはり太刀打ちできない「迫力のある音響と大画面」が価値の実態だ。さらに、売店で購入できる様々な飲食やグッズが付随機能となる。
上記施策で面白いのが、「稼働率向上」という大テーマのために、「中核価値」を捨てていることだ。主に「実態価値」の部分を武器にビジネスを再活性するという、「価値構造の転換」をしているわけだ。
このような例は他にもある。例えば「カラオケボックス」。若者を中心としたカラオケ離れが一時顕著になっていたが、昨今、再活性化している。しかし、誰もが従来のように利用しているわけではない。また、設備側も工夫をしている。
ポイントの一つは「カラオケを歌う」という中核価値を場合によっては捨てた利用を受け入れていることだ。
利用されているシーンを少し見てみよう。稼働率の低い平日の昼間。ある部屋では、何と、会議やプレゼンが行われている。「個室」という空間はサービスの「実態価値」である。さらに、映像設備も実態の要であるが、今時の映像を映す液晶には、今時ほとんどPCの入力端子が付いている。しかも、結構画面が大きい。余裕でプレゼンができる。飲み物を個室に持ってきてくれるという「付随価値」も便利だ。
平日の昼下がり。ある部屋では若い主婦グループがランチを取りながら談笑している。やはり歌っていない。黎明期のカラオケボックスには乾き物のフードしかなかった。しかし、いつしか「付随価値」として登場し、むしろサービスの「実態価値」ぐらいの重要なファクターになってきた。その部分を利用しているのだ。さらに、「個室・防音」。子供が騒いでも周囲に気にすることもない。
日曜の昼間。楽器を持ち込みバンドの練習をしているグループがある。カラオケマシンは「中核価値」であるが、それを使わずに、音楽用のパワーアンプという設備を「中核価値」に置き換え、「個室・防音」という実態を活かして音楽スタジオ兼用施設としているのだ。
製品特性を意識することは、自社の製品・サービスのどこに重点を置くのか考えることに重要な役に立つ。しかし、新しい製品やサービスを考えるときには、その価値構造を組み替えたり、どこかを排除してみたり、または極端に拡張してみたりすると新たなアイディアが生まれるのだ。
さて、ついでにもう一つ。屋形船。昨今、「焼き肉屋形船」なるものも登場しているらしい。
「屋形船といえば、天ぷらでしょう!」と考えがちだ。確かに、船頭が揚げてくれるアツアツの天ぷらは美味しい。が、それはあくまで「付随価値」ではないだろうか。焼き肉であっても全くかまわない。むしろ、目新しさが受けているのだろう。
どのような企業もこれから固定観念を排除して生き残りをかけていかねばならないのだ。