前回のコラムで、代理店戦略の本質的課題を「儲けの構造を如何に築き上げるか」と定義しました。今回はメーカーのチャネル政策における代理店の位置づけや役割、意義について考えてみたいと思います。
■チャネルの機能とチャネル政策の重要性とは?
チャネルとは一般的に、企業と顧客とを結びつける販路のことを指します。またチャネル政策とは、これらのチャネルが効果的・効率的に機能するように設計し運営・管理していくことと定義されます。
この定義から考えてみると、チャネルとは顧客接点をどのように確立していくかということが重要であるといえます。企業サイドからいえば、どのような顧客にどのように製品・サービスを購入・所有してもらいたいかを決定することであり、顧客サイドからいえばどのような製品・サービスをどのように購入・所有したいかを満たすことであるということがいえます。
こうしてみると、チャネルは顧客の購入意思決定に大きな影響を与える因子であることがおわかりになると思います。顧客とのコミュニケーションをおこない、購入意思決定に影響を与え、自社に成果(収益)をもたらすためのチャネルを設計・運営・管理していくチャネル政策は、事業戦略の中でも非常に大きな役割を果たしていることがいえます。
■チャネルの特性から見る企業側のメリット・デメリット
流通構造(販売形態)の視点から現在の状況を見てみると、多くの企業では3種類のチャネルを活用されているように見受けられます。
①直販(直接販売:企業の営業担当者による顧客へのダイレクト・セリング)
②代販(代理販売:代理店や特約店など、社外のビジネスパートナーによる顧客へのダイレクト・セリング)
③通販(通信販売:インターネットやカタログを活用した、企業による顧客へのダイレクト・セリング)
「①直販」の特徴としては自社の営業担当者が直接顧客とコミュニケーションを取るため、A)顧客情報の収集が容易であり、B)製品・サービスのベネフィットを的確に伝えることができ、C)販売後のアフターフォローにより顧客の満足度を高めることができる、といった点が挙げられます。しかしながら、拠点や人員などの固定費負担が比較的大きく、特定の市場(地域的、顧客特性的)に限定して展開することが現実的といえます。
「②代販」の特徴は、直販をおこなうよりも拠点や人員などの固定費負担を軽減しつつ高い営業力を確保することが可能となります。しかしながら多くの場合、代理店は競合企業の製品・サービスも同時に扱っており、自社の思いのままに代理店を動かすことは困難であるといえます。
「③通販」の特徴は、地理的に分散した顧客に対して自社製品・サービスを均質に届けることができます。しかしながら、製品・サービスの特性から通販といった販売形態には向き不向きがありますし、また投資額が想定している以上にかかってしまうといったケースが非常に多く見受けられます。
■チャネル特性を顧客視点で見てみると
「①直販」は、その企業(メーカー)の営業担当者が直接訪問してくるので、製品・サービスについての詳細情報を得ることができると同時に、提案と販売を直接受けることにより安心感を持つことができるといったメリットがあります。しかしながら、多くの場合その企業(メーカー)の製品・サービスだけで自社の課題を解決しようとすることになり、顧客の本質的な課題解決になるかどうかといった不安もあります。
「②代販」は、地域に密着した企業(代理店)の営業担当者が訪問をしてくるため、長期継続的な取引が可能となり顧客についての理解が深まる傾向があります。そのため、様々なメーカーの製品・サービスを組み合わせて適切な課題解決提案を受けることができるといったメリットがあります。しかしながら、高度な技術力を要する製品・サービスの場合、アフターサービスやメンテナンスといったことには代理店では対応できないというケースも見受けられます。
「③通販」は、インターネットにしてもカタログ(紙)にしても、時間帯に左右されずに注文を出すことができるといったことが最大のメリットとして挙げられます。昨今では、適切なタイミングに必要なものを必要なだけ注文したいといったニーズの高まりにより、通販による注文・購入が増えてきています。しかしながら、製品・サービスに関する詳細情報を得るには困難であり、比較的単純化されたものや使用経験のあるものの購入にしか向いていません。
■あらためて代理店チャネルの意義を考えてみる
以上のことから、チャネルごとに向き不向きがあり企業としてはそれぞれの特性をふまえた上でのチャネルの設計・運営・管理が必要であることがおわかりいただけたと思います。「チャネル・ミックス」とはまさにこのことであり、製品・サービスを適切な顧客に、適切なタイミングで、適切な方法で届ける販路を設計することが肝要となります。
そのような中で代理店チャネルを活用することの意義は何でしょうか?
固定費負担をできるだけ抑えつつ、顧客にできるだけ密着し、顧客のニーズや課題を吸い上げ、適切な製品・サービスを提供していくための仕組みに他ならないことがいえます。同じような製品・サービスを扱う企業同士の競争力が代理店チャネルの優劣に左右されるケースが多く見られることからもおわかりになると思います。
次回は、どのようにしたら代理店チャネルの意義を最大限に活かすことができるのかについて、そのポイントを考えてみたいと思います。