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カナモリさんのいうとおり~ season3

カナモリさんのいうとおり~ season3

発見と気付きを与える育成プログラムの一案

2009 年 6 月 9 日

Cc: Photograph by Andrew Beeston
【編集部からのコメント】
FRISKの”Hello,Idea”というCMがありますが、発見は考え抜いていると日常のちょっとしたことから得られることがありますよね。会議室や研修会場だけでなく、日常から学ぶ訓練はしておいた方が良いですね。ビジネスで悩んでいた問題も息抜きしていて間に解決策が浮かぶかもしれませんよ。
ヒラメイタ!


Cc: david.nathan.cox / flickr

先行きが不透明な昨今の経済。そんな環境下では、ビジネスパーソンに求められるのは、新たな視点と気付き。そうした社員を抱えることこそが、強い企業として生き残りを果たすことができる。ということで、如何にすれば「新たな視点と気付き」を与えられるかと悩む人材開発担当者は多い。
そのヒントになればと、筆者の社員教育講師としての経験から一つのプログラム案を記す。日々の業務に没頭し、少々アタマが固くなってきている中堅社員向けにどうだろうか。

■日常の中に発見は潜むことを理解させる

何らかの知識やスキルを教え込むのではない故、個々人の「新たな視点と気付き」を醸成することは確かに難しい。しかし、何も特別なことをせずとも実現は可能なのだ。日常の中にでも常に新たな発見は潜んでいるはずだ。
ほんの小さなことでも、直接自分のビジネスに結びつかないことでもかまわないのだ。生活者や街、商店の店頭、それらのちょっとした変化に気づく敏感さが重要なのだから。
部下なり、教育をする対象者なりに聞いてみて欲しい。「この24時間、もしくは今週が始まってから、何か自分にとって新しい発見があったか」と。
多くは「特にない」と答えるだろう。
そうしたら、「日常の中にも必ず新しい発見はあるはずだから、街を歩いているときでも、何か新しいことを発見しようと注意するように」と伝えよう。

■ちょっとした非日常を意図的に作るようにさせる

数日したら、「何らかの発見はできたか」と聞いてみて欲しい。「日常の中の発見」がうまくできた社員もいるかもしれない。
しかし、多くは「特に発見はなかった」と答えるだろう。そうしたら、「その数日、どのように発見を求めたのか」を聞いてみよう。
多くは通勤の行き帰りの道や電車の車内で、街や人々の様子をつぶさに観察したが、特に変化はなかったと答えるだろう。
日常の通勤でも、うまくすれば新たな発見ができるが、それができなかったら、ちょっとした非日常を作る努力をさせてみよう。難しいことではない。週に一日でもいい。普段とちょっと通勤ルートを変えてみるのもいい。普段行かない街に行き、ちょっと歩いてみるのもいい。漫然と変化のない日常の繰り返しの中で発見ができないのであれば、その日常をちょっと変えることが大切だと理解させるのだ。

■時にはRadicalにやらせてみる

それでも何も発見ができないという社員がいたら、Radical(極端)にコトを起こすことで行き詰まりを打破する重要さを教えたい。ちょっと違うところを歩いて発見がなかったら、極端に観察範囲を広げさせるのだ。
例えば、筆者はネタ探しによく街を歩く。事務所が新橋なので、銀座を抜け東京駅までを流す。しかし、そのルートは慣れてしまっていてもはや刺激が薄くなっている。そうしたときには、さらにその先を歩く。丸の内に出るか、日本橋に出るか。その先は秋葉原まで歩を進める。複数の表情を持つ街。そこに集う人々もまるで違う。それらを見て歩き、比較する。そんなことをしていれば、何らかの発見がある。
普通にやって、ちょっと工夫して、それでもダメなら徹底的にやる。その努力の中に発見があると理解させたい。街歩きで何かを発見することが主旨ではないのだ。そこから実際の業務も同じことなのだと理解させることが肝要だ。

■言語化することによって整理する習慣づけを行う

何らかの発見ができたら、二段階でアウトプットさせよう。「なんとなく発見できて面白かった」では意味がない。発見し、言語化するところまで精査してこそ、新たな視点と気付きが定着する。
まずは口頭で報告させる。それなりに何かを語るだろう。次に、長文でなくてもかまわないので、文章で報告させよう。口頭で伝える以上に精査しなければならなくなる。できるだけ報告内容には「どんな意味合いがあるのか」「論拠は何か」と突っ込みを入れよう。普段曖昧な状態で報告を済ませている自分に気づかせるのだ。

■発見をビジネス化するプロセスを体験させる

街での発見を報告させる際に、ただ見たことを報告するのではなく、そこからどんなビジネスのネタが考えられるのかを考えさせよう。自社のビジネスとつながるかは業種によって異なるので、全く別の視点でいい。新たに起業する場合でも、特定の業種にビジネスアイディアを売り込むという前提でもいい。
実はこの部分は筆者は大学で経済学部の学生に毎年考えさせてみている。アタマの柔軟な学生は、実現性の可否はともかく、実にいろいろなアイディアを考案できる。ビジネスパーソンとなってからある程度年月が経った状態で、その柔軟さを思い出させ、さらにビジネス感覚を取り入れた思考ができればベストだ。しかし、いいアイディが出るかどうかはまた別の話。新たな発見をして、それをビジネスと結びつけさせようとする努力のプロセスが大切なのだ。

■アウトプット前提で新たな視点を持たせる

上記でプログラムは1セット終了だ。しかし、必ずもう1セット実行して欲しい。今度は、1週間後に前項のような文章での報告を必ず提出させる旨を理解させて、何らかの発見を求めるのだ。
1週間後に報告があった際に聞いてみて欲しい。恐らく、2セット目の方がより多くの発見があったと回答するはずだ。アウトプット前提でものを見ることで、視点はより鋭くなることを理解させるのだ。

今回は一つの人材育成プログラムの案をお届けした。「研修」という形式を取ると、つい、そのときだけのこととなり、定着化しない。このような日常の中から学ばせるプログラムも是非試していただきたい。

カナモリさんのいうとおり~ season3




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